Top / QBlog / 2017-06-01

敵は味方のフリをする!

平成29年5月15日の 東日本不動産流通機構(レインズタワー)発表によると、とうとうデータでも中古マンション、中古一戸建ての市況悪化が顕著であることが報告されました。
しかし、そんな中でも成約単価、新規販売登録単価はまだ上がっています。
また新築マンション、新築一戸建ては既に成約率も70%を大きく割り込み、竣工していても成約しない売れ残りがあちこちで見られています。

結果、新築現場では大幅な値引き合戦的様相を呈しています。

さて、この状況を冷静に見てみると、見えてくるものが有ります。

それは、不動産業者は なんでもありなことをする ということです。

なんでも有りなことをする とは?

仲介時の査定額を、べらぼうに高い額、売れるはずのない額の提示を平気でしているということです。

コーラルの査定ではありません。

大手不動産業者の査定額のことです。

一戸建てもマンションも、どちらも査定額を「信じられないくらい高い金額」で提示しているのです。そんな売出価格では、問い合わせすらこないであろうほどの価格なのです。

さて、最近、とても気になることが立て続けに起きています。

それは、先にも書きましたが、仲介時の査定額があまりに高く、業者買取時査定額はとても低くなってきているということ です。

まず、マンション仲介時の査定額についてですが、この査定額、コーラルの上限査定額を100とすると、大手不動産業者は120とか130を提示しています。

例えば、

例えば、コーラルで3000万円なら3600万円や3900万円ということです。
この査定額で売り出したとしても、買い手がつけば問題ないのですが、現実はそう上手くいきません。

特にマンションの場合、査定価格を算出する時は、取引事例比較法をどの不動産業者も採用しています。査定時に、過去の取引事例を調べ、価格を検討、算出する方法です。これは大手も零細企業も、町場の不動産業者も変わりません。

査定に採用する過去の成約事例が同じなので、どの不動産業者に査定依頼しても、提示する査定額はあまり差額が出るはずがないのです。

しかし、先にも示した通りその査定額は何故か、大手不動産業者の査定額だけが、べらぼうに高いんです。
コーラルでは5000万円で算出するところを、6000万円や6500万円という査定額を平気で提示しています。

通常、大手不動産業者は販売活動を開始する際、査定価格の115%の価格を設定、販売開始する場合が多いのですが、これを大幅に超えた価格でチャレンジしましょうと提案査定しています。
また、もし成約しなかった場合、査定価格90%を上限に買取保証しているケースもあるのです。
もし査定額3000万円の場合、チャレンジ販売価格は3450万円、6カ月後成約しなかった場合、2700万円で買取すると言うことになります。

この範囲ならまだ理解できます。

しかし、チャレンジ価格3600万円、3900万円となる価格からの販売は、もう次元が違います。

大手不動産業者の担当者は、この価格で成約するなんて思っていないのでしょう。

考えているのは、媒介契約(売りを任せて頂く契約)を貰えれば、後は何とかごまかすことが出来ると思っているとしか考えられません。
売れないのは自分の責任ではなく、社会の変化が急だからとかなんとか言うのでしょう。

これに対して、買取査定額はコーラルの下限査定額を100とした場合、5から6割の査定額になってきています。
一時期、8~9割がメインという時期が有りましたが、現時点では、もうそんな高額買取査定額は出てきていません。

この査定額の開きにどんな意味があるか、とても不気味な現実が隠されています。
それは、事実を認識しない売主を不動産業者は簡単に誘導し、騙すことなどなんとも思っていないということ! です。

さて、 「売主は事実を認識しない」 とはどういうことでしょう。

事実を認識するとはどんなこと?

事実とは、実際に起こった事柄または存在する事柄のことです。
これは言わずもがなでしょう。

ただ、事実よりもより重要な事柄があります。それは「事実に対するわたしたちの認識」です。
周囲にいる人や世間一般の人が、その事実に対してどのように認識しているかの方がより重要なのです。

例えば、「道路幅が3メートル」という事実があるとします。
これは「事実」ですが、この事実を知っていてもあまり意味がありません。
道路幅が3メートルであることに対して、通行人が広いと感じているのか狭いと感じているのかといった「事実に対する人々の認識」の方がより重要なのです。

その道路を利用する者が3メートルの道路幅が狭いと認識していれば、道路を広くする必要があります。

逆に広いと認識しているのであれば、狭くする余地が生まれます。

利用する者の事実に対する認識を知ることで、その事実に対して対策や施策を講じることができます。
実はこの道路幅3mの、広狭の認識は、単純な話でしたが、もし不動産売買になったら、重要事項は1つではなく、他面に渡っているということを知り、行動する必要があります。これも知っていなければいけません。

道路幅が4m未満の場合、建物を再建築する場合、建築基準法で道路中心線から2m確保できるよう広げなさい(セットバックしなさい)と決められているからです。
もし、セットバックしなかったら、建築基準法違反となり、建築基準法違反の家など金融機関は住宅ローンなど融資対象から外しますし、誰も買わなくなります。

そのため、関係者はセットバックして再建築します。

これは当たり前のことです。
不動産関係、建築関係の仕事をしている人なら当然知っていることでしょう。
しかし、一般の方々は、再建築するときや売買するときに初めて知る人も多いんです。

このように、実際に「事実に対する人々の認識」の重要性を理解している人は多くないように思います。
もしくは、理解していたとしても、実生活でそこまで思いを張り巡らせている人は稀ではないでしょうか。
または、見ないで済ませたいという人間の性 もあるかもしれません。

わたしは、最近、クルマを日産ティーダに乗り換えました。
グレーのティーダです。
そのことで、ティーダが世にこんなに走っていると言う事実を知りました。認識したのです。
ティーダに乗り換える前は、ティーダがこんなんに街中を走っていると言うことを知りませんでした。
日産ティーダというクルマが有るとことは知っていなのに、街中にこんなに走っているとは知らなかったのです。

事実に対する私の認識は大きく変化しました。

また、もうひとつ、とても大きなクルマの変化に気づいたのです。

それは、セダン形のクルマがとても少なくなっていることです。
ティーダに乗り換える前は、セダンに乗っていたので全く見えていなかったのですが、セダンがとても少なくなっているという現実を認識させられました。

えっ、もう知っていた?
もし知らないと言う人は、よかったら確認してみてください。

経営学者のピーター・ドラッカーは、著書『イノベーションと企業家精神』で「イノベーションのための七つの機会」の一つに「認識の変化」を挙げています。

認識の変化がイノベーションを生むとしています。

ドラッカーは同書でそのことを次のように上手く述べています。

「コップに『半分入っている』と『半分空である』は、量的には同じである。
だが、意味はまったく違う。
とるべき行動も違う。
世の中の認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」。

何かの事実を知った時、その事実を人々がどのように認識しているのかを確認する必要があります。

「事実」よりも「事実に対する人々の認識」の方がより大事なのです。

事実に対する人々の認識で起こることが有ります。

それは、『 流行 』です。

流行はどうして起こる?

「流行」は「事実に対する人々の認識」に他なりません。
例えば流行色が赤であれば、「赤」そのものが「事実」で「赤が流行っている」が「事実に対する人々の認識」です。
セダンを代表するクルマは「カローラ」ですが、このカローラが流行らなくなったと言うより、その他の例えばパッソ、ヴィッツ、アクアなど「ハッチバックが流行っているという認識」です。

後者の方がより大事ですよね。

流行は誰によってつくられる

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によると、
「風習や慣習に対し、ある一定の期間、相当数の人々がある新しい行動様式を自由に選択し、採用し、廃棄することによって生じる広範囲な社会的同調行動の現象」
を流行と言うとのことです。
これを社会的に存在せしめる正当性の根拠は「新しさ」という点にあり、流行はアイディアあるいはイノベーションの普及過程の一領域であるとのこと。

一般的には些細なものをめぐって生じ、それは一時的ではかないものであるが、人々の目には無視することのできない変化として感じられ、流行の採用や廃棄は個人の自由裁量にゆだねられ、慣習や規範と異なり、社会的な統制や制裁を伴わないが、心理的な圧力で統制され個人をこえた圧力として人間に迫ってみます。
流行は他人の目を意識するところに成立し、価値の変化を含んでおり、社会的影響が強まると文化変動を促す一要因になったり、慣習や規範の枠を破るようになることもある。

資本主義社会では、流行は企業化、商品化され、資本の利潤追求に利用されている。

そうです。
流行は企業化、商品化され、資本の利潤追求に利用されているのです。
わたしたちの高く売りたいという思いは、企業の利潤追求に利用されているんです。

まとめ

マンション仲介時の査定額について、コーラルの上限査定額を100とすると、大手不動産業者は120とか130を提示していると言う現実は、今、わたしたちの高く売りたいという思いを利用し流行しています。
しかし、TBS日曜劇場「小さな巨人」の中での名セリフにもあるように、
組織において、自分を守る方法は、自分しかいない・・!
敵は味方のフリをする・・のです。
組織の部分を社会と置き換えてみてください。しっくりくると思いませんか。

「事実に対する人々の認識」が自分に都合の良いように解釈したいと思っている素人を、言い換えれば 現実を見ないで済ませたいと言う人間の性 を、不動産関係のプロは あなたの味方のフリを利用して商品化し,資本の利潤追求に利用しているのです。

この、あなたの味方のフリをした流行の先に見え隠れするもの。

それは、徐々に変化した世界なのかもしれません。

その徐々に変化した世界は、しかし確実に、もうわたしたちの足元にあります。

ドラマでは、たびたび騙されるたびに倍返しして勝利する主人公ですが、現実にはそんな都合よいことはなかなか起きません。

あなたが再起できなくなってからでは遅いんです。




井上正子




コメント