売却価格と売却益との関係

不動産には価格がいくつもあると言われています。
例えばよく聞く言葉に一物四価とか一物五価がありますね。
この意味は、一つの不動産物件に四つや五つの価格があるとの例えです。
一物四価の4つの価格とは、「実勢価格」、「公示地価」、「固定資産税評価額」、「相続税路線価」が該当します。
一物五価という場合には、上記4つの価格と「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」になります。
4つか5つかは、基準地標準価格を公示地価の補完と考えるか、別として取り上げるかで異なります。

但し、この五つの価格しかないかと言われればそうではありません。

実は、この中で「実勢価格」にはもう一つの分けられた価格が有るのです。

その価格こそ、売却価格と言われているもので、上記の「実勢価格」はこの売却価格の中の一つの価格である成約価格と同じと言われているのです。

考え方としては、『実勢価格=成約価格』となります。

実はこの『実勢価格=成約価格』が他の価格、「公示地価」、「固定資産税評価額」、「相続税路線価」「基準地標準価格(都道府県地価調査価格)」に大きな影響を与えている事でもあります。

地価の種類

≫公示地価(地価公示)
国土交通省土地鑑定委員会が判定する1月1日時点の標準地の土地価格で3月公表されます。
図書として毎年発行されています。


≫都道府県地価調査標準価格
各都道府県知事が公表する7月1日時点の基準地の土地価格で9月公表されます。
各県ごとに毎年発行されています。


≫路線価(相続税・贈与税路線価)
国税庁が課税算定の基礎とするため調査する1月1日時点の土地価格です。
国税局ごとの路線価図(財産評価基準書)が毎年発行されています。


≫路線価(固定資産税路線価)
固定資産税算定のために市町村が決定する3年に1度の1月1日時点の土地価格です。
図書としては発行されていません。市町村ごとに縦覧場所・期間が設けられます。


≫実勢地価
実際に市場で取引される価格です。


インターネットを使って調べるには

インターネット上で地価を調べることができるサイトが増えています。以下に主なものをあげます。

≫国土交通省「土地総合情報システム」
公示地価、都道府県地価調査標準価格、実勢地価を調べることができます。


≫国土交通省「土地総合情報ライブラリー」
公示地価、都道府県地価調査標準価格の記者発表資料を見ることができます。


≫国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」
過去3年間の全国の路線価(相続税・贈与税路線価)を調べることができます。


≫財団法人資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
都道府県地価調査標準価格、路線価(固定資産税路線価)を見ることができます。



では、この成約価格は如何にして作られているのか、まずはこの成約価格の作られ方を解説していきたいと思います。

売却価格とは⁉『実勢価格=成約価格』過程の価格

不動産の価格とは、三省堂大辞林の解説によれば、物の価値の貨幣による表示。ねだん。とあります。
一例として「消費者価格」とあり、この考え方を不動産売買に用いれば、売買において売主と買主が売買合意した価格ということになります。

言い換えれば、価格とは、一般に、財(用役を含む)の価値の貨幣的表現であるのです。

その結果、売主の所有する財(不動産)を売ろうとするとき物の価値を貨幣的表現で決めなければならなくなります。
その価格が売出価格となり、売主が不動産の売却スタート時点に不動産の価値を貨幣的表現で決めたものとなり、この価格は販売価格とも言われます。
実は、不動産を売り出すとき、不動産を扱う際に守るルールとして「不動産の表示に関する公正競争規約」という規約があり、ここに二重表示価格の禁止という決まり事があります。
不動産を売るときにはこのルールを守らなければ違反となるのです。※1
そのことから売出価格=販売価格をひとつ決めなければいけません。
しかし、この売出価格=販売価格を決めるにあたり、一消費者である売主は一物四価とか一物五価とも言われていることからその価格の決め方が分かりません。

いわゆる現時点で市場に出して「実際に売れるであろう金額」の相場価格が分からないのです。

そこで登場するのが、不動産業者がある手法によって割り出す価格を聞く必要が出てきます。
その価格が査定価格となり、その査定価格を基に売主は売出価格=販売価格を決めることになるのです。

このように、売主が売り出して買主との売買価格=成約価格の合意までに要する価格「実際に売れるまでの価格」を売却価格と言い『実勢価格=成約価格』までの過程に必要になる価格ということにもなるのです。

尚、成約価格を取引価格いう表現も使う場合もあります。

売買を目的とした不動産の価格評価を一般的に価格査定と言いますが、この時でた査定価格は本当は「おおむね3か月以内に売れると想定した金額」のことを指すこととなっています。
しかし、実際は不動産会社が売主の様子を見ながら提案することも多いと言う現実があります。

売却益(売却後の利益)とは

売り出しから成約までの期間は?

あなたはこれからご自身の持つ住まい用マンションを売ろうとされています。

さて、そのマンション、いったいいつ成約できるか知っていますか?

わかるわけないですよね。

その答えは、「マンション8カ月、一戸建て住宅11カ月」 が平均となります。

えっ、長いって思われますか?
そう、実は統計の取り方によりその期間は長くもなるし、短くもなるんです。
上記の期間は、アットホーム(株)が首都圏在住の方に平成27年6月12~15日にインターネットで調査したものですが、一般の方が見ることのできる不動産系ポータルサイト(SUUMOやアットホーム、ホームズなど)にある売却価格であれば、この期間になるのもまんざらではないものと考えられます。

ただ、不動産業者が見ることのできるレインズにある売却価格は、売り出しから成約までの期間は2017年度では中古マンション約2.5カ月、中古一戸建て約3カ月になります。

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【REINS TOWER・首都圏不動産流通市場の動向:2017年度】

出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構から発表されたデータ【REINS TOWER・首都圏不動産流通市場の動向:2017年度】

世界に同じものが存在しない、あなたの住まい用マンション、今まで売る行動もしたことないのに成約するまでの期間がいったいどれくらいになるのかなどわかるわけがないのが普通なんです。

上記の統計のように8カ月や11カ月もあるかもしれません。
また、レインズ統計のように中古マンション約2.5カ月、中古一戸建て約3カ月となるのです。

しかし、売り出しから1週間や2週間、1カ月間での成約もコーラルではとても多くります。

売却するとなったらおそらく何かしらの思惑やその先にある予定があるから売却しようと考えられているのではないでしょうか。
いつ売れるかもわからないって、とても不安なことかもしれません。

ここでは、その不安を少しでも解消いていただくことを目的に、
マンションや戸建て住宅などの住まい系住宅がいったいどれくらいの期間で成約できるのかを見てみたいと思います。

さて、通常、自宅を売却開始(売出開始)してから成約するまでの期間はその物件の価格と売り出そうとしている時期、それに不動産業者の力量とで計り知れるかもしれません。

データで見たの成約までの期間

客観的なデータでは、アットホーム(株)が調査した「中古物件の“売り手”と“買い手”のキモチ調査」の結果があります。
これは5年以内に首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の自宅を「売却した人」295人(マンション184人、一戸建て111人)と、中古住宅を「購入した人」386人(マンション261人、一戸建て125人)、計521人を対象として、平成27年6月12~15日にインターネット調査を実施したものです。

この中では、売りに出してから売れるまでの期間は平均8ヶ月、一戸建て住宅で11カ月となり、マンションより一戸建ての方が長いという結果が出ました。

アットホームの調査結果はこちらからどうぞ↓↓

この結果を考慮すると、不動産業者が採用している媒介契約の最長期間3カ月では売却開始から成約までは届かないという結果が出ています。

媒介契約を3カ月間としていることの理由

媒介契約には有効期間があり、専任・専属は最長3カ月間、一般媒介契約は有効期間の定めは特にありませんが、行政の指導は3カ月以内としています。
その結果、3カ月間という期間で不動産業者は成約に向け戦略と戦術を練りそれを実行していると考えられます。
コーラルでは、査定時に売主様のご希望を聞き、3カ月間や6カ月間などの売却戦略と戦術を練り、それに従ってPDCAサイクル売却手法を実行しています。

さて、あなたは聞かれたことが有るのではないでしょうか。
住まいを売り始めて3カ月間がおおよその成約の目安となっているだろうことを。

それは媒介契約の決められた期間からなのです。

これをあなたはどう思いましたか?
「思ったよりも短いんじゃない」「えっ、そんなもの?」「ちょっと長いかも?」と感じる方も多いでしょう。

しかし実態は、マンションで8カ月、一戸建て住宅で11カ月もかかっているのです。
これを聞いて「わっ、長っっっ・・・」って思った方が多いのではないでしょうか。

もう一つのデータでは

各売却期間における取引事例数シェアを見ると、売却期間が1ヶ月以内でのシェアは首都圏で47.8%、近畿圏で49.3%、中部圏で43.2%となっており、首都圏・近畿圏では全体の約半数が、中部圏では4割強が、売り出し開始から1ヶ月以内で成約に至っているとなっています。これは、売り出しがスタートした時期から成約するまでの期間のデータで、首都圏は単純にマンションの購入を考えている人口が多いからこそ平均期間も短くなります。

この結果を見てあなたはどう思いますか?
やっぱり売り出しからおおよそ3カ月も有れば成約しそうと思われたかもしれませんね。
さて、本当にそうでしょうか。
この2つのデータ、双方正しいデータなのです。

売り出し開始~成約までのデータはあてにならない!

実は、データは調査時点により大きく変わるのではないかと言われています。
例えば、アベノミクスの始まる前と始まって2年後では売れ行きそのものが違いますし、購入者の購入意欲も全く違います。
従っていつデータを取るかで住まいの売却成約期間は変わってきていると言えるのです。

また、データをとる場所によっても違います。

場所によっては内覧者や内覧希望者が出てこないケースもありますから、データはあくまでも目安の一つとして捉えておくのが良いでしょう。

ここで結論ですが、上記期間は平均期間なので、当然売り出し開始から3カ月間で売れないこともあります。
しかし1カ月間で成約することも多々あります。

では、この違いはいったい何でしょうか?

それは、売却を任せる不動産業者の質と言えるかもしえれません。

例えば、こんな経験をした売主さまはいたりするのではないでしょうか。

不動産屋に売却を任せたのだけれど、当初の査定金額が高いのではないかと不安だったり、売却プランが曖昧だったり、
根拠がないのに値下げを提案してきたり、他社への宣伝活動や内覧に対して非協力的であったりなどなどです。
もしこのような思いをされていたとしたら、それは他でもない不動産業者が売買に不慣れか、経験が乏しいか、はたまた営業マンの力量が足りないケースが考えられます。

否、あなたを騙そうとしているのかもしれません。

もし、あなたが不安に思い、その不安を解消されないまま売却を続けたらどうなるでしょう。
不満はあなたのためにはなりません。

過去に出ている売却までの期間のデータは、あくまで目安であり、あなたの売っている物件に当てはまるとは言えません。

しかし、3カ月間では何かしらの成果はあるはずです。

貴方が任せている不動産業者や担当者が、あなたに納得がいかない成約できない説明をしていると思われたのなら、媒介契約を更新せずに他の仲介業者への変更も念頭に置いておくべきです。

もうひとつのデータ

もう一つのデータとは、売却開始から成約までに価格がいくら変化するかをまとめたものです。
このデータは、売却までの期間のデータより信憑性がとてもあります。
そのデータで表されている数値は、「中古マンションでは、売り出しから成約までの期間が長くなるほど、値下げ幅が大きくなる傾向にある」というものです。
売却期間ごとに価格かい離率を見てみると、三大都市圏ともに「売却期間の長期化に伴って価格かい離率が拡大し、成約に至るまで期間が長くなればなるほど価格の値下げを余儀なくされる状況」が確認できたと発表しています。
これは当然な結果で、売却開始から3カ月、6カ月、9カ月と長期に売却活動が経過した場合、売れ残りや何かある物件などど勘ぐられ、結果価格もその期間とともに下げざる負えないこととなります。


しかし、なかなか売れないからと言って販売広告では禁止されていることもあります。
不動産広告の場合は、おとり広告が禁止されているのです。

おとり広告の禁止

おとり広告とは、取引できない物件の広告のことで、以下のものが該当します。

  ・架空物件
  ・売却済みの物件
  ・売却する意思のない物件

こうした物件を広告し、集まった客に他の物件を紹介して取引することを狙いとする悪質な広告です。
また、著しく安く見せるための二重価格表示、物件を優良に見せるための不当な比較広告、誇大広告、虚偽広告、実際の物件や競合他社が取り扱う物件よりも著しく優良であることを示す優良誤認表示なども禁止されています。
以下では、その中でも売却価格に関連することとして二重価格表示について解説します。

不動産売却時に「二重価格表示」は禁止されています!

日本で不動産を売買や賃貸などする場合、ほぼ不動産業者が介在することになりますが、その不動産業者は例えば、関東地方および甲信越地方おいては公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会に加盟し、「不動産の表示に関する公正競争規約」及び「不動産業における景品類の提供に関する公正競争規約」を守らなければいけない事とされています。

内容はと言うと、不動産を売買したり賃貸したりで扱う場合、「不動産の表示に関する公正競争規約」という規約を守る必要があり、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とするというものです。

実はその規約の中に不当な二重価格表示の禁止があります。

(不当な二重価格表示)
第20条 事業者は、物件の価格、賃料又は役務の対価について、二重価格表示(実際に販売する価格(以下「実売価格」という。)
にこれよりも高い価格(以下「比較対照価格」という。)を併記する等の方法により、実売価格に比較対照価格を付すことをいう。)をする場合において、
事実に相違する広告表示又は実際のもの若しくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならない。

参照:https://www.sfkoutori.or.jp/jirei/hyouji/008/008_1.html

不当な二重価格表示の具体例

≫家電量販店の場合…
家電製品の店頭価格について、競合店の平均価格から値引すると表示しながら、その平均価格を実際よりも高い価格に設定し、そこから値引きを行っていた。

≫メガネ店の場合…
「メーカー希望価格フレーム+レンズ一式3,000万円 → メーカー希望価格の半額」
としているなどです。

このように事実に相違する広告表示であるなら当然ですがしてはいけません。

また、実際のもの、もしくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはなりません。

しかし、「二重価格表示はしてはいけない」という一般的な解釈は、すべての価格表示に当てはまるわけではありません。

では「違反にはならない」上手な表示方法についてご紹介します。

不当な二重価格表示にならない例

禁止されているのはあくまでも、事実に相違する広告表示です。
実はプライスダウンの表示が事実であるなら、二重価格の表示は問題ありません。
許される場合の事例と表示の仕方「不動産の表示に関する公正競争規約」の第14条には次のように書かれています。

過去の販売価格を比較対照価格とする場合の二重価格表示(第14条)
(1)過去の販売価格の公表時期及び値下げの時期を明示したものであること。
(2) 比較対照価格として用いることができる「過去の販売価格」とは、「値下げの3か月以上前に公表された価格であって、かつ、値下げ前3か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格」をいいます。
(3) 値下げの時期から6か月以内に表示するものであること。
 ただし、6か月以内であっても災害その他の事情により物件の価値に同一性が認められなくなった場合には、同一性が認められる時点までに限る。
(4) 土地(現況有姿分譲地を除く。)又は建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く。)について行う表示であること。
上の要件に適合すれば実売価格に比較対照価格を付すことが可能なのです。

但し、賃貸物件は、これら要件を満たしていたとしても二重賃料表示はできません。

まとめ

東京などでは媒介契約期間内の3カ月で売れるケースが最も多いのが事実です。
しかし、他方、地方ではそれ以上に期間がかかっているマンションも多数あります。

実は、完全競争のもとでは、売却価格は需要と供給とにより決定されるので、いま、図の縦軸に価格をとり、横軸に需要量・供給量をとれば、売却価格が下落(または上昇)するにつれて消費者による需要は増加(減少)することになることから、マンションや一戸建ての売却期間の長短も需要と供給とにより変わると言っていいのです。

また、成約期間の長短は不動産業者や担当者の技量次第で有るかもしれません。
時には、売却を任せる相手を変える勇気を持つことも必要と言えるでしょう。

売却開始から成約までの期間は、高額売却可能性を追求するのであれば長めにとること、但し、成約までにそうそう時間を取ることができない場合、やはり高額売却にチャレンジするのではなく、同規模同類物件などのデータから過去成約額に照らし合わせ、また時事も勘案した安全な売却開始金額にすることが必要となります。
売却は、その期間が長くなれば長くなるほど成約できる金額は低くなる傾向にあるということも忘れてはいけません。