不動産流通とネットとITとビッグデータとの関係

日本の総住宅数は、2013年10月現在6,063 万戸あり、その数は毎年総世帯数を上回るペースで増加し空き家率も上昇を続けています。
一方で、日本の中古住宅流通シェア(全住宅流通量に占める中古住宅の流通量)は2013年時点で14.7%に留まり、欧米諸国と比べて1/6 程度と低水準にあります。
こうした背景から、中古不動産流通市場の可視化・活性化に繋がる物件情報の整備・公開や、新たな不動産仲介サービスが求められております。

その様な状況の中、政府や各省庁も様々な中古不動産流通活性化策を打ち出しています。
民間では、最近注目なサービスとして、

未来型不動産サービス
―ビッグデータ活用により中古不動産売買市場の“可視化”と“活性化“を実現―
や、

従来の 不動産会社と比べて、ネットを活用することで「より安い手数料で、より物件を高く販売 すること」を実現させます。
などなど。

最近のマンション売買市場はとても便利な機能が登場してきました。

不動産は確かにネットで情報の発信や受信がされやすい商品だと思います。

いずれもとても素晴らしいサービスなのですが、ただ、残念なことにとても重要なことが抜け落ちてしまっています。

マンションや戸建て住宅が売買される場面において一番重要なことが2つ抜け落ちてしまっていることです。

その重要なこと、それは不動産は生きているということです。

また、価格の妥当性と中古不動産売買市場の活性化は別物であると言うことです。

確かに私たち不動産業者は中古不動産を過去取引売買価格、近隣価格相場など売却に関する様々な情報から多角的・客観的に評価し価格を付けます。
通常不動産業者が価格コメント(査定)する場合、机上査定と現地査定の2つ有ります。
ネットやITの活躍でこのうち机上査定が簡素化することはとても良いことと言えます。
しかし、その価格が納得いくからと言って成約につながるかと言えばそうならないのが常なのです。

マンションや戸建て住宅など中古不動産は新築時から生き続け年数を経て今に至ります。
その今の状態は千差万別でひとつとして同じ状態が有りません。
これは人間にも言えることなのですが、ちゃんとケアして来た人とそうでない人の寿命が違うように中古不動産も寿命が違うのです。

マンションや戸建て住宅は外観からは計り知れないくらい室内状況で価格差が出て来ます。
新築時の価格差は中古物件には当てはまらないことの方がとても多くあります。
机上査定と現地査定は時に大きな価格差となる場合が有ります。

ネットやITは中古不動産の流通を欧米並みに起こすになる一助になるかもしれないでしょう。
しかし、ただ単にネットやITがとても便利で普及したからと言って中古不動産が流通するわけではありません。
確かに、机上査定の段階での価格評価は便利です。
従ってもっともっとこの様なサービスが多くなること良いことと言えます。
ただ、そのサービスが直ぐさま中古不動産売買市場の“可視化”と“活性化“を実現とはならないでしょう。

中古不動産の活性化とは何か?

売買時の仲介手数料を格安にしるから流通が起こるとか、

ネットが有るから情報が隅々まで行き渡るとか、

ビッグデーターを活用するから価値の可視化が出来るとか、

人間を外見だけで判断することが全く出来ないように、
思うほど若者の結婚離れが打開出来ない様に、
中古不動産も簡単に流通がおこるものでは無いのです。
そんなことは到底出来るものではないのです。

不動産は生きています。


社会資本整備審議会・住宅宅地分科会の資料から

会議資料によると、2013年の調査において、空き家の総戸数は約820万戸でした。
このうち、賃貸や売却の為に空いている戸数を除く 「その他の空き家」 は約320万戸です。この320万戸をさまざまな視点で分類すると、下記の数字が浮き彫りになります。

また、1年間の戸建供給戸数実績はおおよそ30万戸から35万戸、マンションは6万戸から9万戸の間にあります。
ということは、1年間で多い時でも年間45万戸の新築住宅が市場に供給されていることになります。
しかし、今般発表された住生活基本計画の見直し会議資料には、

★昭和56年以降の建築が約110万戸で、それ以前の物件が約210万戸
★S56年以前の約210万戸のうち、耐震性があるものは約74万戸
★躯体への腐朽や破損がない物件は、S56年以降で約67万戸
★S56年以前で、耐震性があり、腐朽・破損のない物件は約36万戸
★上記の腐朽・破損なし物件約103万戸のうち、駅より1km以内で簡単な手入れにより利活用可能な空き家は約48万戸

とあります。
この内容から言えることは、103万戸もの物件がまだまだ使用利用出来ることとなります。
この103万戸が市場に出てきたらどうなのことでしょう?。

年間45万戸の約2.3倍もの住宅が一挙に市場に出てくるとは思えないにしろ、市場は大パニックに陥る可能性が有るのではないでしょうか。

続は こちらへ ⇒ 不動産市場活性化について